一夏だけじゃ、だめ。
珠璃はまた本を1冊手に取りながら「夏休みは空いてていいねー」と笑う。
漫画も小説もどれだけ読む気なんだろう。
「……借りたら、帰るのか?」
「そうだなー、とりあえずこれだけ借りれたし帰ろうかな」
「じゃあ……いっしょに帰ろ」
「伶依がそんなこと言うのめずらしー! いいよ! 待ってて、これ借りてくるね」
ドッドッドッと異様な速さで心臓が鳴る。
珠璃はあっけらかんに笑って、カウンターのほうへ行ってしまった。
ーー帰り道、珠璃を花火大会に誘いたい。
ぐだぐだと考えていてもダメだ。 いま、行動を起こさないと、珠璃はすぐ遠くへ行ってしまうんだから。
図書室を利用する本来の目的なんかすっかり忘れて、決意を改めていると「怖い顔してどうしたの?」と珠璃が戻ってきた。
いっしょに花火大会いこう。
そう言ったらきみは、どんな顔をするのかな。