君の言葉で話したい。
約束の日になった。
雨泽は鈴を見つけると、
嬉しそうに駆け寄ってきた。

「これは相原さんの書類です。」
告白を断った相手に会うのは、
なんだか決まりが悪い。
鈴はお礼を言って、
すぐに立ち去ろうとしたが、
雨泽はそれを許さなかった。

「私、やっぱり相原さんが好き。
彼氏がいるって知ってる。
でも諦められません。」

断られたけど。
雨泽は唇を噛み締めて、
捲し立てた。 

「本当に好きです。
お願いです。付き合ってください。」

「前も言ったけど、
彼氏がいるから、
宗くんと付き合えないし、
悪いけど、迷惑だよ。」

業務上で困ったことがあるかもと、
教えた連絡先に、
彼が数日おきに、
メッセージを送ってくるのにも、
辟易していた。

一度、運悪く、
通知を目の当たりにした、
蒼太に問い詰められて以来、
雨泽のことは着信拒否している。

「それにこんなこと言いたくないけど、
私は宗くんから見たら、
外国人だし、
中国語だって話せない。
宗くんの名前すら、
中国語で言えないんだよ。
同じ国籍の彼女見つけなよ。
その方が楽だから。」

諦めてもらうためとは言え、
言いすぎている。
罪悪感に押しつぶされそうになりながら、
鈴はなるべく雨泽の目を、
見ないようにしながら、
できるだけ早口で言い終えて、
その場を立ち去った。

またあの顔をしていた。
初めて告白を断った時の表情が、
脳裏に鮮明に蘇ったのだった。



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