君の言葉で話したい。
「はい、鈴。ジュース買ってきたよ。」
蒼太は肩で息をしながら、
鈴にコーラを差し出してきた。
炭酸は飲めない。
もう何回そう伝えただろう。

自分の心が狭くなったのか、
蒼太が変わったのか、
最近、鈴と蒼太の間で、
少しずつ波長が合わないことが、
多くなってきた。

鈴はコーラを無理やり、
喉元に流し込み、
せっかく買ってくれたのだからと、
苦手だと言うことを、
辞めにした。

舌が痺れた気がする。
やっぱり炭酸は苦手だ。

ふと、時計の針を見て、
更に気分が落ちた。

「見る予定だった映画、
間に合わなくなっちゃったけど、
次の回にする?」
「あー、もういいんじゃない。
予定変えてホテルで休もう。
鈴、ホテルの場所わかる?」

予約したホテルに着いた途端、
蒼太は歩き疲れたと、
ベッドに横になり、
いびきをかき始めた。

最近サークルの付き合いで、
飲み歩いており、
疲れが溜まっていると、
よく愚痴を聞かされている。

ホテルの部屋に、
設置されている鏡に目をやると、
着飾ってきた自分が、
滑稽に思えて、
鈴はイヤリングを無造作に、
取り外した。

片方が床に転げ落ちたが、
それを拾う気力もなかった。

以前は愛おしく思えていた、
蒼太の寝顔に苛立ちを覚えるのが嫌で、
鈴はイヤホンを付けて、
音楽を聴くことにした。
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