俺がお前を夢の舞台へ
すました表情を保つ蒼空に苛立ちが増す。


「結局お前は自分を優先すんのかよ。周囲の人間の気持ちも考えてみろよ!」


「言ったところでどうなる。俺の夢は?彩絢の夢は?約束は?俺には俺の大切なものがあんだよ!簡単に野球を捨てたお前と一緒にすんな!俺はお前と違って野球を捨てられない。だから話すつもりはない」


「……んだと…?」


“簡単に野球を捨てた”…?


「てめぇ…もう一回言ってみろ」


俺は簡単になんて捨ててない。


諦めざるを得なくて、しかたなく諦めた。


本当はまだ野球をやりたくてやりたくてたまらない。


「俺だって…っ。俺だって大切なもののために…辞めたんだ!お前とは違う!野球にばかり囚われて、周囲の人間を大事にできないお前とはちげぇんだよ!!」


……蒼空には何も言っていない。


だから、俺の家庭事情知らなくて当然だ。


「…悪い。つい言いすぎた。忘れてくれ」
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