俺がお前を夢の舞台へ
「俺だって知りたくて知ったわけじゃない。偶然が重なっただけだ」


そう。


本当に偶然、転校先が決まるよりも前に、蒼空に再会した。


そこで蒼空の病気を知った。


「んなの関係ねぇ。昔から言ってんだろ。フェアにいこうぜって」


「…状況はいつだってすぐに変わるんだ」


蒼空の真っ直ぐな瞳から逃げたい。


コイツは俺と違って、どんな苦境に立たされようと野球を辞めなかった。


“このまま運動を続ければ、死ぬかもしれないんだぞ”


友翔を病院に連れていった時、本当に偶然そんな言葉を聞いた。


大きな総合病院の一角でそんな話をしていたのは5ねんぶりに会った蒼空とその父親だった。


「お前は自分の命を捨てでも、彩絢を悲しませてでも、夢を追う。けど俺は違う。夢や約束よりも大切なもんがあるんだ。お前にはわかんねぇよ」


友翔のこと、生活のこと。


俺には夢を捨てでも守らなければならないものがある。


傷つけられない存在がいる。
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