俺がお前を夢の舞台へ
サインが見えていなかった。


ミスるはずのないトスを落とした。


あれはただのエラーじゃない。


「前も言ったけど、あれはただのエラーだから。なんでもかんでも病気のせいにすんな」


「…んなわけねぇだろ。お前はもう野球ができない身体なんだよ。いい加減認めろよ。頼むから、彩絢を悲しませんな」


もし蒼空が急死したら?


彩絢はどれだけ傷つくだろうか。


俺が母親を亡くした時と同じ感情が沸くだろう。


何をする気にもなれなくて、毎日がモノクロの世界だった。


自分がどんな風に周りから見られているのかを気にして、落ち込んでいることを悟られないように振る舞った。


心から笑えることなんてまったくなくて、生きた心地がしなかった。
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