俺がお前を夢の舞台へ
冷たくなったお袋を目の前にしたとき、怖いと思った。


これが“死”なんだ、と。


火葬され、煙になって昇っていくお袋を見送るあの無力感。


灰をかき集めることも、元に戻すことも、生き返らせることも、何もできない。


お袋は2度と俺に笑いかけてくれない。


2度と会えない。


もう、顔を見ることも話すこともできない。


永遠の別れをジワジワ炙られるように実感した。


「あんなツラい体験を彩絢にさせるわけにはいかない」


「…は……?お前…」


蒼空が何かを言いたげに言葉を飲み込んだのがわかった。


「…とにかく、病気のことを隠して野球を続けるんなら、彩絢とは別れろ。彩絢に近づくな」


「んなの飲めるわけねぇだろ」
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