俺がお前を夢の舞台へ
「蒼空!お医者さんなんて言ってたの?」


母さんが心配そうな顔で俺を迎える。


重度の心配性の母さんに病気だって言われたなんて言えない。


野球を辞めさせられる。


それだけは絶対に避けたかった。


「何もなかったってさ」


野球を辞めたくない。


甲子園に行くまでは辞められない。


甲子園へのチャンスはあと2回。


3年の春と夏。


春の出場校の選考はもうすぐだ。


それがダメだったらチャンスはあと1度。


最後のチャンスを逃すわけにはいかない。


今練習を辞めるわけにもいかない。


「蒼空。ちょっと来い」


父さんが俺を連れて人気の少ない自販機の奥に向かう。


「本当は何て言われたんだ」


…隠し通せるわけがないか。


母さんと違って父さんは昔から俺の嘘に気づくのが早かった。


そのせいで何度怒られたことか。
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