俺がお前を夢の舞台へ
怖くないと言えば嘘になる。


それでも諦めきれないのが夢ってもんだ。


ずっと甲子園を目指して歩んできた。


今さら諦められっかよ。


「蒼空だよな」


「……は?」


ピリついた空気を破ったのは俺でも父さんでもなかった。


明るい茶髪で、小学生くらいの男の子を連れてる男。


この顔立ち…。


「……勇翔か…?」


ずいぶん外見が変わったけど、顔は昔の面影を残してる。


小学校卒業と同時に勝手に引っ越していった戦友。


甲子園での再会を願った永遠のライバル。


「今の話…」


…バッタリ再会しただけじゃなく、会話まで聞かれてたか。


今の俺には再会を喜ぶ余裕なんてない。


「…誰にも言うなよ」


「そうじゃなくて。野球、続けんのかよ」


非難するような目付きで俺を見てくる。


「……なんだよ。久々に再会していきなり説教かよ」


何も言わずに姿を消したくせに。
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