俺がお前を夢の舞台へ
やっぱり…。


やっぱり勇翔だ…っ。


「結城、その場でもいいから挨拶を」


小泉先生に促され、勇翔は嫌そうに立ち上がった。


皆の視線が勇翔に向くなか、蒼空だけはジッと廊下を見つめている。


勇翔の方に向こうともせず。


「結城勇翔っす」


すっかり声変わりして、大人びた声になっている。


見た目はヤンキーだけど…やっぱりこれはあの勇翔なんだ。


「聞いた話じゃ、藤野と八神は結城の幼なじみなんだろ?いろいろ教えてやってくれ」


「あ…はい…」


私はそう返事をしたけれど、蒼空は無反応だった。


眉間にシワを寄せて、口をへの字に曲げている。


やっぱり勇翔のこと…怒ってるのかな…。


勇翔は勇翔で、全然私の方を向いてくれない。


昔とは変わってしまったそのオーラが怖くて、声をかけられなかった。


私と仲良くしてくれていた勇翔はいない。


結局、その日は1度も目を合わせられずに1日が終わった。


放課後になると勇翔は足早に帰ってしまって、部活がある私にはどうすることもできなかった。
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