俺がお前を夢の舞台へ
「…俺じゃダメ?勇翔じゃないとダメ?」


「え……?」


初めて目が合った。


蒼空の瞳は悲しげで儚かった。


「なんで……なんでそう思うの…?」


たしかに最近蒼空との時間は減ったけど…。


でもそれだけでこうなるはずがない。


「…勇翔といる方が楽しそうだなって思っただけ」


…っ!


「そんなこと…」


ないとは言い切れなかった。


勇翔と話す時間は幸せだと感じるけど、蒼空と話す時間は…?


あまりに当たり前の存在すぎて、蒼空を疎かにしてたんじゃ…?


「ごめん…」


T字路に着いてしまった。


「じゃっ」


蒼空が何の躊躇いもなく曲がろうとする。


「待って…!」


慌てて蒼空の手を掴み、無理やり目を合わせる。


「私…蒼空のことが好きだよ!それだけは勘違いしないで…?」


蒼空は少しだけ瞳を揺らし、ニッコリと笑ってくれた。


「ありがと」


頭に触れた蒼空の大きな手。


ゆっくり離れていき、次第に蒼空の姿も小さく遠退いていく。


もう二度と蒼空が振り向いてくれないんじゃないか。


そんな不吉な予感が頭を過ったんだ。
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