俺がお前を夢の舞台へ
「藤野、保健室行こうか。八神は練習に─」


「俺が連れていきます」


蒼空が私の肩を抱いて一緒に立ち上がってくれた。


痛かったけど、保健室に行くほどのことでもないんだけどな…。


「行こ、彩絢」


「あ…うん……」


蒼空と二人きりで保健室まで歩く。


静かな道のりだった。


吹奏楽部の演奏、体育館から響いてくるバッシュの擦れる音、ボールが跳ねる音。


いろんな音が聞こえてくるはずなのに、静かだった。


私たちの間を温い風が吹き抜ける。


「…最近考え事多いけど、どうかした?」


蒼空が遠慮がちに聞いてきた。


「なんでもないよ」


「そ。ならいいや」


なんとなく感じるひずみ。


ぎこちなく歯車が回ろうとしているように感じてならない。
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