俺がお前を夢の舞台へ

蒼空は、その翌日は学校に来なかったけど、さらにその次の日にはけろっとした様子で学校に来ていた。 


でも、部活には来なかった。


誰にも何も言わず、エースは野球部を去った。


大柳先生に詳細を聞いても何も教えてくれない。


退部したのか、休部してるだけなのか。


何もわからなかった。


ただ、残された部員には終戦ムードが充満していたんだ。


“蒼空がいない橘が勝てるわけがない”

“蒼空がいない橘はただの弱小高校”


野球部内でもそんな風に言う声が後を絶たない。


勝てるわけがないと諦め、真面目に練習する人は激減した。


蒼空がいなくなってから、橘の野球部は全くの別物になってしまったんだ。


蒼空…。


蒼空はどこにいっちゃったの…?


帰ってきてよ…。


何を抱えているの…?


“俺は大丈夫だから…っ”


明らかに大丈夫じゃなかった。


あの日、蒼空に何が起こったんだろう。


聞きたいのに蒼空に避けられ続け、気がつけば三学期の終業式が終わってしまっていた。


蒼空が心配で心配でたまらない。


だけど蒼空は何も教えてくれないし、それどころか目も合わせてくれない。


「はぁ…」


式が終わり、2年生最後のホームルームも終わり、教室には誰もいなくなった。


蒼空と別れてから、女の子たちからの風当たりが強くてしんどかった。


でも、クラスが変わればそれも変わる。


そのことにホッとしている自分がいる。
< 255 / 434 >

この作品をシェア

pagetop