俺がお前を夢の舞台へ
蒼空は、その翌日は学校に来なかったけど、さらにその次の日にはけろっとした様子で学校に来ていた。
でも、部活には来なかった。
誰にも何も言わず、エースは野球部を去った。
大柳先生に詳細を聞いても何も教えてくれない。
退部したのか、休部してるだけなのか。
何もわからなかった。
ただ、残された部員には終戦ムードが充満していたんだ。
“蒼空がいない橘が勝てるわけがない”
“蒼空がいない橘はただの弱小高校”
野球部内でもそんな風に言う声が後を絶たない。
勝てるわけがないと諦め、真面目に練習する人は激減した。
蒼空がいなくなってから、橘の野球部は全くの別物になってしまったんだ。
蒼空…。
蒼空はどこにいっちゃったの…?
帰ってきてよ…。
何を抱えているの…?
“俺は大丈夫だから…っ”
明らかに大丈夫じゃなかった。
あの日、蒼空に何が起こったんだろう。
聞きたいのに蒼空に避けられ続け、気がつけば三学期の終業式が終わってしまっていた。
蒼空が心配で心配でたまらない。
だけど蒼空は何も教えてくれないし、それどころか目も合わせてくれない。
「はぁ…」
式が終わり、2年生最後のホームルームも終わり、教室には誰もいなくなった。
蒼空と別れてから、女の子たちからの風当たりが強くてしんどかった。
でも、クラスが変わればそれも変わる。
そのことにホッとしている自分がいる。