俺がお前を夢の舞台へ

三打席勝負-勇翔side-

【勇翔side】


「話がある」


いつになく真剣な目で声をかけられた。


蒼空が俺にそんな風に話しかけてくるのは初めてだ。  


そもそも、本当に蒼空が彩絢と別れるとも思ってもみなかった。


裏を返せば、それだけ体が限界なんだろう。


「話っていうか、頼みたいことがあるんだけど」


この時間、コイツは真っ先にグラウンドに駆け出し、部活に励んでいた。


それがそんな素振りも見せないんだから、野球を続ける意思がないんだろう。


蒼空の様子を見ていれば分かる。


「バイトだからまたあとでな」


「聞いてくれんの?」


蒼空は驚いたように目をパッチリ開く。


その目に自分の目を合わせる。


「大事な話なんだろ」


まぁ、だいたい話の想像はついてるし、それに対する答えももう決まっている。


「…じゃ、またあとで」


「おう…」


ぎこちない挨拶。


なんとなく、蒼空とのわだかまりが小さくなっていった気がした。
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