俺がお前を夢の舞台へ
訪れる長い長い沈黙。


蒼空は一言一言を噛み締めるように、ゆっくりと続けた。


「……辞めるつもりはないけど、続けられない」


蒼空が右手を強く握りしめる。


ベッド付近の壁には、その拳で殴ったような跡もあった。


一人で悩んで、一人で苦しんで、一人で結論にたどり着いたんだろう。


その痛々しい痕跡から目を背けたかった。


「…努力すれば絶対に夢は叶うと思ってた。報われない努力なんかないって…本気でそう信じてた」


蒼空はまた寝転んで天井を見つめる。


「叶わない夢もあるんだな…」


バカみたいにポジティブで、前だけを見ていた蒼空らしくない発言。


自分の身体の限界を知り、現実を知った蒼空は、俺の知らない蒼空だった。
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