俺がお前を夢の舞台へ
「今さらお前に頼むのも図々しいかもしんねぇけどさ…」


何を言われるかはだいたい分かってる。


蒼空は身体を起こしてベッドから降りた。


「俺の代わりに彩絢を…橘を…甲子園に連れていってやってくれ」


ガバッと頭を下げる蒼空。


蒼空が俺に頭を下げる日が来るなんて誰が想像できただろう。


「頼む。力を貸してくれ…っ」


膝の上の手が震えている。


…そう言われると思っていた。


俺に野球をやれと頼んでくるんだろうなと分かっていた。


答えも用意していた。


「都合の良いときだけ頼るなって思うかもしんねぇけど、お前しかいねぇんだ。俺より良い球投げれんのも、俺より良いバッティングができるのも、勇翔しかいないんだよ」


断るつもりだった。


野球はしないと決めているから。


野球に時間を割けばその分収入が減るから。


だけど。
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