俺がお前を夢の舞台へ
「私が行ってくるね!」


冷却スプレーを持って部員に駆け寄る。


球が当たったのはキャプテンの林田太郎(はやしだたろう)。


ファーストを守り、チームの主砲として貢献してくれている存在だ。


菜々子ちゃんの彼氏でもある。


「大丈夫?」


「大丈夫大丈夫。それより、蒼空はどうしたんだ?」


処置には目もくれず、投球が乱れまくってる蒼空を眺めている。


「…不調みたいだね」


原因は勇翔だろうけど、プライベートのストレスが影響するなんて蒼空にしては珍しい。


「蒼空があんなじゃ、うちには勝ち目がないからさ。情けない話だけど」


タローは心配と悔しさが入り雑じった顔で俯いた。


橘の野球部は、2年生が9人、1年生が5人。


甲子園に出られるような学校に比べて、圧倒的に少ない。


この中で上手いのはやっぱり蒼空。


蒼空だけが飛び抜けているから、皆蒼空を頼る。


本人には、“それじゃ甲子園には行けない”と嘆いていた。
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