俺がお前を夢の舞台へ
まさか、また野球をやる日が来るとも。


甲子園を目指す気になるとも。


全く思ってもみなかった。


「……なぁ、もう1つ頼みたいことがあるんだけど」


「なんだよ」


どうせしょうもないことだろう。


そう思ったけど、蒼空の目は真剣だった。


「…何?」


「最後に全身全霊で勝負がしたい」


…勝負?


「3打席だけ俺と勝負してほしい。それで最後にするから」


「…俺じゃ勝負になんねぇよ」


コイツの最後を飾るなら、ブランクが長い俺よりもバッテリーを組んでいる捕手やキャプテンのほうが相応しい。


何年も野球を避けてきた俺の実力は、蒼空の足元にも及ばない。


「ゴチャゴチャうるせー。いいから勝負しろ」


「あ?それが人にものを頼む態度か」


「俺に負けるのが怖いんだ?」


「はっ?んなわけねぇだろ」


「なら勝負しろよ」


「チッ。受けて立ってやるよ。覚悟しとけ」
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