俺がお前を夢の舞台へ
「相変わらず扱いやすいなお前」


口車に乗せられてつい勝負に乗ってしまった俺をみてケラケラ笑う。


「うっざ…」


いい雰囲気だったのがぶち壊しじゃねーか。


「─ありがとな、勇翔。本当に」


……。


「…お前に感謝されるとキモい」


こいつに感謝されると調子が狂う。


病院で再会したあの日から、俺たちは別々の方向に歩き出した。


決して交わらない方向に。


そのきっかけを与えたのは野球だった。


でも、それと同時に、交わるきっかけを与えてくれたのも野球だった。


「…けど…俺も感謝してる。ありがとな」


もう一度だけ野球に向き合いたい。


初めて、自分の気持ちに素直になれた。


たった一人で戦っている蒼空のために。


俺は、蒼空を甲子園へ連れていく。


もう迷わないし、もう逃げない。


この約束は必ず果たすんだ。
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