俺がお前を夢の舞台へ
ニ人は犬猿の仲だった。


そして。


二人は、互いに互いが唯一の理解者だった。


けなし合い、文句を言い合い、結局は良い好敵手として切磋琢磨してきた。


そんないびつな関係が、蒼空と勇翔だったんだ。




『チッ。んだよ、勝手にいなくなるとかフェアじゃねーっつーの』


でも。


勇翔は消えた。


小学校の卒業式の翌日、勇翔はどこかへ引っ越してしまった。


誰にも何も告げずに。


もぬけの殻となった結城家の玄関口で立ち尽くす蒼空。


その瞳は少し濡れていた。


『甲子園行くんじゃなかったのかよ』


最大のライバルで最大の戦友を失った蒼空は、力なく膝から崩れ落ちた。
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