俺がお前を夢の舞台へ
「「あのさ」」


意を決して切り出そうとした声が、彩絢とピッタリと重なった。


「久々にハモったな」


倒れる前から俺が一方的な理由で彩絢を避けていたから、会話をするのも久しぶりだ。


「ね。ホント、久しぶりだね…っ」


彩絢の目に涙が浮かんでいる。


たった一言ハモっただけなのに。


それだけのことで泣くなんて、俺はどれだけ彩絢を追い詰めていたんだろう。


こじつけの理由で強引に別れて、勝手に彩絢を避けて、挙げ句目の前で倒れて。


いったいどれだけ傷つけたことだろう。


「彩絢の泣き顔、もう見たくねぇよ…」


俺が知らないところでもっと泣いていたのかもしれない。


俺のせいで傷ついて、悩んで。


「野球部ね、順調だよ」


無理して笑っているのがよくわかる。
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