俺がお前を夢の舞台へ
「…俺、ダメだな」


「え…?」


彩絢の顔から笑顔が消えていく。


不安げな、本当の表情。


「泣いてほしくないけど、無理に笑ってほしくもない。んなの、ワガママだよな」


全部俺のせい。


それなのに、自分の理由を勝手に押し付けて…。


「俺は、彩絢を幸せにできない」


ずっとそう感じていた。


勇翔の隣にいる彩絢を見る度に。


自分の病状が悪化する度に。


「…ごめんな、心配かけて」


俺より勇翔の方がよっぽど彩絢を幸せにできると思った。


俺には泣かせることしかできないから。


野球ばっかりでカップルらしいことなんて何もしてやれなかった。


幼なじみの延長で、特別感もなかった。


挙げ句、彩絢と勇翔の事情に漬け込んで一方的に別れた。
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