俺がお前を夢の舞台へ
“彩絢の知らなくていいことだから”


病気だと知られたくない一心で、彩絢との間に壁を作った。


その時の悲しげな顔に気づいていたのに、自分のことを優先して知らないフリをした。


彩絢は自分のことをひどい奴だって云うけど、それは俺の方だ。


「…すごいね…蒼空は」


不意に彩絢が呟いた。


目を合わせて真意を聞こうと思ったけど、目は合わなかった。


どこか遠くを眺めている。


そして、しばらくしてようやく目が合う。


「ずっと一人で闘ってきたんでしょ…?」


ドキッと心臓が跳ねた。


一人で闘ってきた。


俺は、ずっと頑張ってきた。


それが認められたんだと感じた瞬間だった。


本当は苦しかったし、怖かった。


頑張れば頑張るほど身体がツラくなって、努力すればするほど夢が遠ざかっていって。
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