俺がお前を夢の舞台へ
「勇翔、早く」


大柳先生が急かしても、勇翔は動かなかった。


自分の手をジッと見つめている。


「勇翔…?…はい、1番」


仕方ないから、その手の上に背番号を乗せる。


「……俺が1番つけていいんすか?」


…え……?


「この番号はアイツのもんだ。俺には…つけられない」


勇翔が私に背番号を押し返してくる。


「そんなこと……」


“そんなことない”


軽々しくそう言っていいんだろうか。


きっと、勇翔には私には計り知れないプレッシャーがのしかかっている。


たった数ヶ月しか練習していないのに、甲子園をかけた戦いにエースとして挑まなければならない。


いったいどれだけの責任と重圧があるのだろう。
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