俺がお前を夢の舞台へ
「夢を追って何が悪い。簡単に夢を捨てるお前にだけは説教されたくねーんだよ」


二人の喧嘩は止まらない。


話が分からないから、止め方も分からない。


「“簡単に”…?何も知らねぇくせに…」


あ、ヤバイ。 


逆鱗に触れた。


そう思った時には遅かった。


勇翔が蒼空の胸ぐらを掴んで壁に押し付ける。


「やめて勇翔!!」


二人を引き剥がしたいけど、力の差でどうにもならない。


見かねた野次馬が数人応援に駆けつけてくれて、なんとか二人を引き剥がすことができた。


互いに互いを憎み合っている二人。


ただならぬ雰囲気に、誰も口を開かない。


「前はこんなんじゃなかったのに…っ」


根底にリスペクトがあったあの頃の仲の悪さとはレベルが違う。


いったい二人の間に何があったんだろう。


どうしてこんなことになっているんだろう。


「…状況はいつだってすぐに変わるんだ」


蒼空の言葉の意味も、何もかも、分からなかった。


分からないまま、喪失感だけが宙を漂っていた。
< 37 / 434 >

この作品をシェア

pagetop