俺がお前を夢の舞台へ
そして、投球モーションに入る。


リリースされたボールは、尚輝くんの構えからは大きく外れたところに飛んでいってしまった。


初めて見る勇翔の暴投に会場はどよめき、ベンチに動揺が走る。


初戦からずっと投げている上に、今日だけで球数は120球を超えている。


ブランクがある体でそれだけ投げられていることだけでも奇跡。


そんな状態の勇翔がどこまで持つか。


尚輝くんが指示を出し、マウンドに内野手が集まる。


尚輝くんがなんて声をかけたのかはわからないけど、勇翔の表情が柔らかくなった気がした。


皆が勇翔の頭や背中をポンッと叩いてから散っていく。


「勇翔頑張れーー!!」


蒼空を甲子園に。


夢を現実に。


想いの籠った球は、ドンピシャでミットに収まった。
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