俺がお前を夢の舞台へ
いつにも増して引き締まった表情で勇翔がマウンドに立つ。


帽子を被り直し、ロジンを手につける。


ふぅーっと息を吐きかけると、指先から白い粉が舞う。


勇翔の一挙一動から目が離せない。


相手は7番から。


奇しくも9回表の私たちと同じ巡り合わせだ。


1番には回さず9番で切りたい。


「頑張って…皆…」


蒼空から勇翔へと渡されたエースのバトン。


決勝へ。


そして、甲子園へ。


勇翔が第一球を投げた。


第一球はストライク。


打者の反応的に際どいコースに決まったようだ。


ストライクを1つとっただけで、橘側のスタンドが大きく波打つ。


しかし。


「あっ…」


2球目が甘く入ったのがベンチからでも分かった。
< 375 / 434 >

この作品をシェア

pagetop