俺がお前を夢の舞台へ
「…ロジンつけすぎだろ」


アイツは緊張するとロジンを触る癖がある。


…そりゃ、緊張するよな。


一発が出りゃ夏は終わる。


甲子園には行けない。


「……俺、とんでもないものをアイツに背負わせてんだ」


「え…?」


「俺を甲子園に連れて行けって。俺の代わりに橘を甲子園に導いてくれって」


自分がどれだけ重いものを押し付けて背負わせていたのか、バッターボックスを見つめて深呼吸をする勇翔を見て初めて気がついた。


勇翔の球に対し、相手打者はファールを打ち続けて粘っている。


球数が増えるにつれ、アップで映る勇翔の表情が苦しそうになっていく。


きっと、ベンチやキャッチャーからじゃ分からない微かな変化が、中継カメラを通せばよく分かる。
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