俺がお前を夢の舞台へ
✴✴
「蒼空っ!!」
病室の扉を開けると同時に中へ飛び込む。
蒼空は驚いた顔でこっちを見たかと思えば、すぐに察したような表情を作り、手元のスマホに視線を落とした。
「聞いたんだな。勇翔から」
今日の蒼空は勇翔みたいにクールだ。
目を合わせようとしてくれない。
「どうして手術を受けるの?確率30%なんだよね?」
蒼空の腕に触れ、こっちを見るように促す。
しばらく沈黙を続け、ようやく目を見てくれた。
その目はびっくりするくらい澄んだ色をしていた。
「俺は完治させてプロ野球選手になる。そう決めた」
真っ直ぐで、何の迷いもなくて。
そんな瞳を見たら、もう何も言えなかった。
「……プロ目指すんだ」
沈黙を避けようと絞り出した言葉は、そんな薄っぺらいものだった。
「そ。俺の野球人生を挫折で終わらせたくない。だから、新しい目標を持って再スタートすることにした」