俺がお前を夢の舞台へ
「…俺はさ?」


蒼空はゆっくり噛みしめるように話し始めた。


「勇翔にとんでもなく重いものを背負わせてんだ。

俺の代わりに橘を甲子園に連れて行けって。

中継を通して、緊張で震える勇翔を初めて知った。

アイツは戦ってる。

プレッシャーと。

責任と。

重圧と。

たった一人で戦ってる。

そのツラさが俺には分かる。

自分の腕に皆の夢が懸かってる怖さも俺には分かる。

それと戦うのがどんなにしんどいことかも…。

そんな勇翔を見てジッとしてられっかよ。

このまま甘えっぱなしで甲子園に連れて行かれても素直に喜べない。

そう思った。

それに、準決勝の最後の一球。

一打サヨナラの場面でアイツが投げた球は、上手く投げれた試しがない球種だった。

その度胸に触発されたんだよ。

俺も勇気出そうって。

新しい夢を叶えるために、一歩踏み出そうって。

彩絢には申し訳ないけど、もう決めたことだし、決断を変えるつもりはない」
< 399 / 434 >

この作品をシェア

pagetop