俺がお前を夢の舞台へ
「……さぁ。別に興味ないんで」


蒼空の顔がみるみる不機嫌になっていく。


ボールを真上に投げてキャッチする動作をしきりに繰り返している。


「橘で甲子園目指すなら、頼れるものには頼っといた方が賢いと思わないか?」


お父さんがそのボールを掴み、庭の奥にあるネットに投げ入れた。


「……アイツを野球部に引き込めって言いたいんですか?」


蒼空がジッとお父さんを見つめて動かない。


まさに私がしたかった話だ。


お父さんに“ありがとう”と視線を送ると、にっこり笑って立ち上がった。


「さぁな。俺はもうお前の監督じゃない。自分たちで考えるんだ」


“たち”


その言葉に含まれる意味を察した蒼空は、チラッと私を見た。


何か言いたげな表情。
< 41 / 434 >

この作品をシェア

pagetop