俺がお前を夢の舞台へ
第1章

すべてのはじまり

──


【春のセンバツ出場校決定】

【3年連続桜森高校】


バサッと新聞を置く音がして振り返ると、庭に出ていこうとする蒼空と目が合った。


八神蒼空。


幼稚園の頃からの幼なじみで、生粋の野球バカ。


造形の美しいその顔立ちは、夜の薄暗さでもハッキリと分かる。


「次は…来年の夏だね」


県立橘高校2年、藤野彩絢(ふじのさあや)。


野球部のマネージャーとして甲子園行きをサポートしてきたつもりだった。


だけど…もうチャンスは一回しかない。


「…今の橘じゃ厳しい。秋の予選で痛感した」


蒼空はそう言って厳しい寒さを物ともせず投球練習を始めた。


お父さんが少年野球の監督をしているから、我が家には手製のネットが張り巡らされている。


ちょっとした打撃練習や投球練習ならここでできる。


だから蒼空は毎晩うちにやって来る。
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