俺がお前を夢の舞台へ
「…それと。蒼空と付き合ってるんだろ?だったら気安く男に“好き”って言わない方がいーと思うよ?」


……っ。


勇翔が遠く感じる。


こんなに近くにいても、勇翔が遠い。


勇翔のことがわからない。


「……蒼空のこと、大事にしてやれよ。アイツのこと、あんま困らせんなよ?」


え……?


圧倒的に違和感がある。


「…どういう意味…?じゃあ、さっきなんで蒼空にあんなこと…」


勇翔はいったい何を知ってて、何を隠してるの…?


勇翔が野球を避ける理由と何か関係があるの…?


あの勇翔が野球から退くなんてどうしても考えられない。


「…勇翔は…蒼空のこと嫌ってないんだね…?」  


「さぁな。俺らは昔から好きでも嫌いでも、友達でも敵でもない、そんな関係だったから」


ううん。


勇翔は間違いなく蒼空を嫌っていない。


蒼空がどうなのかは知らないけど、少なくとも勇翔は蒼空のことを想っている。


でも、隠された“何か”が二人の仲を拗らせているんだ。


「んじゃーな。あ、早退すっから、先生によろしく」


そそくさと屋上を出ていく勇翔を見送ることしかできなかった。


でも、そこにはたしかに修復の兆しが見えていたんだ。
< 67 / 434 >

この作品をシェア

pagetop