俺がお前を夢の舞台へ
“ヤンチャ坊主の結城勇翔”の存在は過去のものとなっていったんだ。


小学生の頃から、勇翔が私や蒼空と学校外で会うことはなかった。


だから立ち直れたんだと思う。


勇翔はもう過去の人。


強烈な個性があるヤツだったから鮮明に記憶に残っているだけ。


あぁ、勇翔っていう悪ガキがいたなぁ。


私にとってはそんな感覚だったんだ。




今も昔も、蒼空が勇翔に対してどう思っているのかは知らない。


二人の仲が良くなかったのは事実。


でも、勇翔が勝手に引っ越したことに1番怒っていたのも蒼空だ。


一緒に甲子園に行くという約束を破られ、裏切られたと思ったのかもしれない。


でも、翌日には全てを忘れたかのように振る舞い、蒼空が“勇翔”という単語を口にすることはなくなった。


今の今まで、勇翔の話は一度もしていない。


去年、そろそろ時効だろうと思って勇翔の名前を出しかけたときは、これでもかってくらい凄まれたから、二度と勇翔の名前は出せない。
< 9 / 434 >

この作品をシェア

pagetop