俺がお前を夢の舞台へ
呆然としている蒼空、ベンチを叩いて怒る監督、蒼空のエラーを書き込む菜々子ちゃん。


まるで時が止まったみたいだった。


当然、バッターランナーはセーフ。


「何、今のミス」


蒼空にしては凡ミスすぎる。


あんな簡単なトスを落とすなんて。


「切り換えてー!!」


菜々子ちゃんは声を出すけど、私はできなかった。


とにかく、ショックだった。


そりゃ人間だからミスはある。


そんなこと分かってる。


でも…。


あんなのミスしようがないでしょ、というトスが捕れなかった。


それがショックなんだ。





結局、そのあとは野手の好プレーのおかげで無失点に抑えられた。


でも、私には後味の悪さが残っていた。


それは蒼空も同じで…。


OB戦連敗阻止にも関わらず、蒼空が纏う空気は重かった。


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