あなたの写真が欲しくて……
痴漢は、駅員さん2人にしっかりと両脇を抱えられて、駅の事務所へ連れて行かれる。
その後ろを男子生徒が、さらにその後ろを私がついて行く。
歩きながら、気づいた。
私たちは、5分後に出発する電車に乗り換えないと、学校に間に合わない。
今日は遅刻だぁ……
入学して以来、初めての遅刻。
叱られるよね、きっと!?
私は悪くないのに、なんで私が叱られなきゃいけないのかな。
なんだか、納得いかない。
そんなことを思いながら、事務所へと入って行く。
すると、事務所に入るなり、男子生徒が駅員さんに声を掛けた。
「すみません。先に、学校に遅刻の連絡をしてもいいですか?」
そうだ!
無断で遅刻をするよりは、その方がいい。
駅員さんに許可をもらうと、男子生徒は、こちらに視線を向けた。
「君も一緒に連絡するから、おいで」
私は、言われるままに、再び、事務所の外に出る。
「中で電話をして、犯人に名前や学年を知られたくないだろ? 変に逆恨みされても困るし」
ああ、そうか。
制服で学校は分かっても、今ならまだ名前も年齢も知らない。
全てを知られるのは、危険だと思ってくれたんだ。
その心遣いに感心するとともに、なんだか嬉しくなる。
ただ正義感が強いだけじゃない。
ちゃんと周りのことを見て、考えて、心配りができる人なんだ。
男子生徒は、スマホを取り出すと、電話を掛ける。
「おはようございます。2年4組の篠塚 晃司です。実は、今、痴漢を捕まえたので、藤代駅の事務所にいます。被害者のえっと……、君、何年何組の誰?」
彼は、突然、私に尋ねる。
「1年2組、新谷 聡美です」
私が慌てて答えると、篠塚 晃司さんは、にこりと笑って、
「被害者の1年2組の新谷 聡美さんと2人、遅刻しますのでよろしくお願いします」
と伝えた。
ふぅ……
私のことまで伝えてくれて、助かった。
自分で痴漢に遭いましたなんて、できれば言いたくはない。
と思っていたら、篠塚さんはそのまま続ける。
「もちろん、これ、公欠扱いしてもらえますよね?」
えっ!?
そんなこと、できるの!?
私は、驚いて、再び、彼を見上げる。
「なんとかしてくださいよ〜!
悪いのは痴漢なのに、なんで俺らにバツがつかなきゃいけないんですか!?
…………やった!
ありがとうございます!
今、代わります」
篠塚さんは、スッとスマホを差し出す。
「りんちゃんが、代われって」
りんちゃんというのは、生徒指導の林先生。
怒ると怖い反面、普段はおもしろくて、生徒に人気のある先生だ。
「はい、お電話代わりました。新谷です」
『新谷、大丈夫か?』
林先生の声がいつになく優しい。
「はい。助けてもらえましたから」
ほんとは、もう泣きたいくらい怖かったけど、篠塚さんのおかげで救われた。
『慌てなくていいから、そっちが片付いてから、ゆっくり来い。篠塚と一緒なら、安心だからな』
あの、厳しい林先生がそこまで太鼓判を押す篠塚さんに、私は興味が湧いた。
その後、再び、篠塚さんに電話を代わると、
「はーい! 了解です!」
とスマホを持っていない右手を上げて、敬礼の真似をする。
ふふふっ
電話の向こうには見えないのに……
その後ろを男子生徒が、さらにその後ろを私がついて行く。
歩きながら、気づいた。
私たちは、5分後に出発する電車に乗り換えないと、学校に間に合わない。
今日は遅刻だぁ……
入学して以来、初めての遅刻。
叱られるよね、きっと!?
私は悪くないのに、なんで私が叱られなきゃいけないのかな。
なんだか、納得いかない。
そんなことを思いながら、事務所へと入って行く。
すると、事務所に入るなり、男子生徒が駅員さんに声を掛けた。
「すみません。先に、学校に遅刻の連絡をしてもいいですか?」
そうだ!
無断で遅刻をするよりは、その方がいい。
駅員さんに許可をもらうと、男子生徒は、こちらに視線を向けた。
「君も一緒に連絡するから、おいで」
私は、言われるままに、再び、事務所の外に出る。
「中で電話をして、犯人に名前や学年を知られたくないだろ? 変に逆恨みされても困るし」
ああ、そうか。
制服で学校は分かっても、今ならまだ名前も年齢も知らない。
全てを知られるのは、危険だと思ってくれたんだ。
その心遣いに感心するとともに、なんだか嬉しくなる。
ただ正義感が強いだけじゃない。
ちゃんと周りのことを見て、考えて、心配りができる人なんだ。
男子生徒は、スマホを取り出すと、電話を掛ける。
「おはようございます。2年4組の篠塚 晃司です。実は、今、痴漢を捕まえたので、藤代駅の事務所にいます。被害者のえっと……、君、何年何組の誰?」
彼は、突然、私に尋ねる。
「1年2組、新谷 聡美です」
私が慌てて答えると、篠塚 晃司さんは、にこりと笑って、
「被害者の1年2組の新谷 聡美さんと2人、遅刻しますのでよろしくお願いします」
と伝えた。
ふぅ……
私のことまで伝えてくれて、助かった。
自分で痴漢に遭いましたなんて、できれば言いたくはない。
と思っていたら、篠塚さんはそのまま続ける。
「もちろん、これ、公欠扱いしてもらえますよね?」
えっ!?
そんなこと、できるの!?
私は、驚いて、再び、彼を見上げる。
「なんとかしてくださいよ〜!
悪いのは痴漢なのに、なんで俺らにバツがつかなきゃいけないんですか!?
…………やった!
ありがとうございます!
今、代わります」
篠塚さんは、スッとスマホを差し出す。
「りんちゃんが、代われって」
りんちゃんというのは、生徒指導の林先生。
怒ると怖い反面、普段はおもしろくて、生徒に人気のある先生だ。
「はい、お電話代わりました。新谷です」
『新谷、大丈夫か?』
林先生の声がいつになく優しい。
「はい。助けてもらえましたから」
ほんとは、もう泣きたいくらい怖かったけど、篠塚さんのおかげで救われた。
『慌てなくていいから、そっちが片付いてから、ゆっくり来い。篠塚と一緒なら、安心だからな』
あの、厳しい林先生がそこまで太鼓判を押す篠塚さんに、私は興味が湧いた。
その後、再び、篠塚さんに電話を代わると、
「はーい! 了解です!」
とスマホを持っていない右手を上げて、敬礼の真似をする。
ふふふっ
電話の向こうには見えないのに……