鵠ノ夜[中]
「……いやに、ならないですか。
俺みたいにほかにお嬢のことを好きな男がいるの」
「嫉妬すんのは自分に自信がないからだろうが」
「……なら、憩さんは、」
「はあ?俺は自分に自信とかどうでもいいんだよ。
どう考えても、あいつが俺のこと嫌いになるようには見えないだろ」
年齢差の余裕?
それとも、釣り合うだけの外面と内面を持ち合わせている余裕?
「俺はまだ……お嬢と出会って、数ヶ月で。
お嬢が俺を、俺らを大事に思ってくれてるのはわかってますけど、」
嫌われないっていう自信がない。
もしかしたら些細なことで嫌われてしまうかもしれない。だってお嬢は、私情を挟めば俺らよりも小豆さんのことが大事だって、言ってたから。
「……なら、そう思ってれば良いだろ」
「え?」
「むしろそう思ってる方が幸せかもなー」
言われてる意味がわからなくて、瞠目する。
嫌われてしまうかもしれないって思ってる方が幸せだって、彼が言う意味が、全然わからない。
俺は一生お嬢に嫌われないまま、お嬢を好きでいたいのに。
そんなことおこがましいってことは、とっくに理解してるけど。
「あいつ。……感情底なしだから」
「、」