鵠ノ夜[中]
「っ、お父様」
「……話がある」
用事を済ませて帰ってきたお父様が、たった一言告げて隣の部屋へと入っていく。
みんなに心配そうな顔をされながら、彼のあとについて隣の部屋へと足を踏み入れた。
「っお父様、大変申し訳ありません」
この状況を、彼はもう理解してる。
わたしが、小豆たちを危険な目に遭わせたことも。
「……謝ることはない。
責任はすべて自分で負うと言ったそうだな」
この国を取り締まる御陵家の、当主。
それが伊達じゃないことは彼の目を見ていればわかる。冷える背筋を伸ばし、「はい」と返事した。
「……なら、これ以降お前は関わらなくていい」
「え、」
「この件は今後、こちらで追う。
お前も五家の人間も、一切モルテに関わるな」
言い切られて、目を見張る。
今回ばかりはこの失態が許されなかったのだろうか。彼は「話はそれだけだ」と終わらせようとするけれど、どうしても納得がいかなかった。
「っ、どうしてですか。
現物も手に入れましたし、今後まだ追うものが、」
「雨麗」
ピシッと。
まるで空気が割れる音が聞こえた気がした。