鵠ノ夜[中]



「お前が動くと現場がややこしくなる」



「っ……」



「それがお前に課した責任だ」



負うと決めたんだろう、と。

諭されて、それを素直に認めることしかできない。返事をすれば彼はもう用事は済んだと言いたげで、仕方なく部屋の扉に手をかける。



「雨麗」



「……はい」



ドアノブに触れたまま、振り返った。




「何か周りで変なことがあれば報告を上げろ」



「……はい。わかってます」



「どんな些細なことでも構わん」



念を押されて、再度「はい」と頷く。

部屋を出ると、4人に大丈夫かと問われた。



「帰りましょうか。芙夏、先に帰ってるだろうし。

はやく帰ってあげなきゃ、心配するわ」



大丈夫だと、笑ってみせる。

組員たちにも同じように心配されたが、平気だと言って事務所を出ると、車で御陵邸へと帰宅する。



「……小豆」



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