鵠ノ夜[中]
◆ 嘘吐きと、三原色
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「あら、おはよう」
いつものようにはりーちゃんと手分けして、こいちゃん、ゆきちゃん、シュウくんの3人を起こして。
半ば引っ張るように本邸に来ると、部屋の前でレイちゃんと出くわした。微笑む彼女は、今日もとても綺麗で。
「おはようございます、皆様」
その隣には、しっかりとスーツを着込んだ小豆さんの姿。
……なんだか、とてもひさしぶりに彼のことを見たような気がする。
「昨日はありがとう。
一応連絡した通り、彼も無事だから。ごめんね」
「ならよかったー」
レイちゃんから小豆さんたちを危険な目に遭わせてしまったと聞いて、僕たちが勝手に心配していただけで。
何も悪くないのに、小豆さんは僕たちに向かってとても丁寧に謝罪してくれた。
「小豆、さっき渡した資料をあとで事務所に持っていってもらえる?
ついでに受け取ってきて欲しいものもあるのよ」
「ええ、皆様をお送りした後に伺いますね」
さっと襖を開いてくれた小豆さんにお礼を言って、中に足を踏み入れる。
相変わらず豪華な朝食を前に、ふと首を傾げるぼく。……なんだか、すこし前に戻ったみたいだ。
「小豆さん、向こうの仕事はいいんですか?」
「ええ。
しばらく雨麗様と別で動いていましたが、その必要もなくなりましたから。以前と変わらず本邸におりますので、いつでもお声がけください」
そしてその違和感を抱いたのは、ぼくだけではないらしく。こいちゃんに聞かれて、小豆さんはそう答えた。
それから、「ごゆっくりお召し上がりください」とだけ言って、一度別の仕事のために部屋を出ていってしまう。
……それって、つまり。