鵠ノ夜[中]
「……憩、わたしと結婚してくれるの?」
「ああ?
お前みたいなめんどくせえ女、他にもらってやれるような男なんかいないだろ」
「……卒業式、
中学のクラスメイトから告白された」
「はっ、付き合えても結婚なんか出来ねーよ。
そもそもお前、俺より相性の良い男なんかいねえだろ」
相性……?と首をかしげたわたしは。
裾から忍び込んでくる手に身を捩りながらその意味を理解して、カッと顔を赤くした。相性、って……!
「っ、変態……!
っていうか憩しか経験したことないのに、相性なんかわかんないし、」
なに言い出してるんだこの男……!
もうこうなったらとことん抵抗してやる、と意気込んですぐ、それを読んだようにくちびるを塞がれて、徹底的に溶かされる。
「っ……、」
わたしのすべてを、わたし以上に知り尽くした男。
一度も途絶えさせることなく続けざまに刺激を与えられて、思考を掻き乱されて、自然と浮かんだ涙を瞬きだけで散らす。
「憩、も、やだ……」
「こっちは嫌って反応じゃねえぞ」
「っ……もう、いっぱいした、」
気づいたら朝になっていることなんて、一度や二度なんかじゃなかった。
でも嫌じゃなかったのは、それほど憩がわたしを愛してくれていることをわかっていたからで、わたしも彼をこれ以上ないほどに愛していたから。
中学生のガキなんか何とも思わねえよ、って。
そう言って高校生になるまで待ってくれた憩が求めてくれるなら応えようって、思っていたから。