鵠ノ夜[中]
そして仕方なく乗った車でついた先は、ここ、八王子邸。
しかもコイツ、実は海外暮らしでこのどデカい屋敷も別荘の一つとか抜かしやがるからイラッとした。どこの王子様だよまじで。
そして今この瞬間、俺らは夕食をこの男と食べる羽目になっている。
……いや、思い返してみたけどやっぱり意味がわからない。
「君たちはそもそも、
各所から集められた彼女の護衛らしいね」
「……それが?」
「いや。……ふふ。
彼女も悪巧みがお上手なようだと思って」
「悪巧みなんかしてないでしょ。
レイを護衛するのが目的で、俺らは集められてんだから」
はあ、とため息をつく胡粋。
はじめは色々と部屋を観察していた胡粋もそれに飽きたのか、機械的な動きで食事中だ。なぜかこの男と話していると、やたら息苦しく感じるのは俺だけじゃないらしい。
「どうやらすっかり毒されてるようだ」
「余計なお世話。
で、結局俺らはなんでここに呼ばれてんの?」
それはね、と。
至極楽しそうに口角を上げた八王子が、女子ウケの良さそうな角度で首をかしげて。
「──夕飯のあとのお楽しみ、かな?」
「……疲れるわ」
「ふふ、どうもありがとう。
俺の商談のやり方は相手をとことん疲れさせてから話を進めるやり方だからね」
「それずる賢いだけなんじゃ……」