鵠ノ夜[中]
「わたしね……
ここ最近、ちょっと色々悩んでたの。……色んなこと、もうどうでもいいんじゃないかって思ったりもして」
「、」
「ひとりで生きていけないことを、痛いほどに実感したの」
今日の夜は、あいにくの曇り空で。
月が見えないと、どうしてか少しだけ、気持ちも晴れなくなる。──月が出たら不安が薄れるとか、そんなことは、無いっていうのに。
「小豆の気持ちは知ってたけど見ないふりしてたのに、はっきり好きって言われて……
雪深も胡粋も、わたしを好きだって言ってくれるけど……その気持ちは、一体いつまで?って考えるようになったのよ」
正直な話、俺も永遠なんてものは、どちらかといえば信じていない方で。
馬鹿馬鹿しいと思っているわけじゃ無い。──ただ、そう思わせるトリガーが、なかっただけのこと。
手っ取り早い話。
永遠なんて信じられるような恋にも相手にも出会ってこなかったってだけだ。
「小豆も、雪深も、胡粋も。
共通点があって……みんなわたしのこと、ずっと好きでいられるって、言ってくれるのよ」
それは端から見れば、とてつもなく羨望的なものでしか無いように思えるけれど。
……人生、そう上手くはいかない。
「だけど、そうね……雪深は。
過去に彼女がいた例がある。きっと胡粋にも、初恋の人はほかにいると思うの」
ふと、考えるのは。
もし雪深がその彼女とうまくいっていたとしたら、あいつはこっちに来てレイを好きになってたかどうか、ってことだ。
何を言ったって、もしも、は、結局もしも話でしかねーんだけど。
「その恋って、諦めようって強く意識したから忘れたものばかりじゃ無いと思うの。
……だから。きっと彼らの気持ちには、どこかしらで終わりがあるでしょう?」
それがすごく怖い、と。
彼女はあくまで、自分勝手な言葉を述べる。