鵠ノ夜[中]
「ほんっとありえない……
なんでレイも菓のこと受け入れてんの」
彼女が落ち着いた後、黙っていたレイが別の部屋に彼女を連れて行った。
どうやら胡粋の父親の兄の娘、つまり胡粋にとってはいとこにあたる存在で、3つ歳下の中学1年生らしい。
別邸のリビングで雪深の席も陣取り寝そべっている胡粋。
おかげで席のなくなった雪深は、芙夏の隣に仕方なさそうに腰を下ろした。
「好かれてんじゃないのか?」
「好かれてるよ、迷惑なぐらい」
「……無理やり襲ったっていうのは?」
はとりの発言に顔を顰めた胡粋が、「俺が小6に手出すと思う?」と嫌そうに口にする。
どうやらさすがにあれは事実ではないようで、彼女の戯言らしい。
「虚言も大概にしてほしいね」
「でも、なんか証拠があるとか言ってなかったか?」
「あるわけないでしょ、手なんか出してないのに」
ほんと迷惑な女、って吐き捨てる胡粋。
こいつの毒舌は俺らの比にならないほどだが、ここまで誰かを嫌ってんのもめずらしい。
「……お前、なんかあったんじゃねーの?」
「うるさい。……ああもう追い返すの面倒」
下手な誤魔化し方だ。
あきらかに、手は出してなくとも"なんかありました"って言ってるようなもんだろ。