鵠ノ夜[中]
「なに、そんな目で見られても困るんだけど」
ため息をつきながら、胡粋が髪を搔き上げる。
その際見えた耳には一粒ダイヤのピアス。……こいつ、ピアスなんかつけてたか?
「こいちゃん、そのピアスどうしたのー?」
「……元カノにもらったやつ」
……元カノって。
こいつからそういう話題が出んのも稀だけど、そういうの引きずるタイプじゃねえだろ。なんで今更、元カノからのもらいもんつけてんだよ。
「早い話、俺の元カノって菓の姉貴なんだよね」
……いや、関係大ありだったらしい。
姉貴は元カノで、今は妹に迫られてて。やっぱり冷静に考えても、めんどくせー話だ。
「まあ俺より4つ年上だったし。
ぶっちゃけ中学生のときに年上の彼女がいたら、恋人ってよりは完全にやることやる目的の方が強いじゃん?」
「こいちゃん至急年上の彼女がいる全国の男子中学生と彼女がいない男子中学生に謝ったほうがいいよ」
「ハイハイごめんね。
……でもまあ、そんなんだったから。俺が本気で付き合ってると思ってなくて、本気じゃないなら自分でもいいでしょって何年も迫られてんだけど」
さすがに中学生はね、って呆れる胡粋。
コイツ、相手がもし中学生じゃなかったら絶対手出してただろ。嬉々として欲の捌け口に使ってただろ。最低だなおい。
「でも本気で付き合ってたんでしょ?」
「いや……?
彼女のことかわいいとは思ってたけど、別に彼女じゃなきゃだめって思ったことはないかな」
「なあ俺が言うのもなんだけどさ、
潔く遊びだって言ってる俺よりもコイツの方がタチ悪くねえ!?」