鵠ノ夜[中]



雪深が思わず声を荒げるが、この件に関しては俺もそれに同意する。

その腹黒さの下にいくつタチの悪い出来事を隠してんだよ。



「でも俺が言いたいのはそういうことじゃなくて。

……今まで何度となく丸め込んできたからいいけど、生憎俺にも"この人じゃないと"っていう相手ができたからね」



だから困ってるんだよ、と。

胡粋が眉尻を下げた。……これって、自業自得じゃね?



「……今回のことは俺協力できねーぞ」



「俺もソレあんま関わりたくないわ〜。

つーかお前が陥落すればライバルが一人減る」



「お前のレイ至上主義って、たまに限りなくクソなときあるよね」



とは言ってるが、本気で雪深も関わりたくなさそうだ。

まあコイツがいろんなもんを後回しにしてきたツケが回ってきただけで、ぶっちゃけ仕方ねーことだし。




「あー……わかったもういいよ。

どうせお前らに手伝ってもらったって仕方ないだろうし、レイに頼む」



むくりと起き上がった胡粋に誰が声をかけるでもなく、そのまま胡粋は別邸を出て行った。

……まあ、引き止めなかったのは何も本気で面倒だと思ってるだけじゃない。



「胡粋って恋愛絡みでほんと嘘つけないよねえ」



「そうだな。

あいつは、何とも思ってない相手からもらったプレゼントなんか身につけたりしないだろ」



俺らの主人を頼ることが最善策であると、判断したからだ。

どう考えたって恋愛絡みなら女を頼った方が賢いし、相手を説得するのもうまいあいつなら容易いだろ、と結論を出した俺らは。



「……こーちゃん?」



わずか数時間で、それを後悔することになる。



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