鵠ノ夜[中]



「途中で誰か来たらごめんね?レイ」



わたしのことを押し倒しながら、そんなことを言う。

それがあくまで演技だってことはわかるけど、なんというかもう、そこに彼女だけじゃなくみんなもいるわけで。



おそらく演技だってことを彼らは悟ってるんだろうけど、この芝居を続けられる自信が無い。

もう既に着物が心もとないし。首筋にキスを落とされると、肩が跳ねた。……胡粋、結構、本気じゃない?



下手に動けなくて困っていたら、完全に解けていなかった帯を、彼にしゅる、と解かれる。

待って、これ……もう結構、はだけてるんだけど。



「ちょっ、胡粋、」



「いい加減にしろ」



さすがにこれ以上はもうむり……!と。

胡粋を止めようとした瞬間、部屋に割って入ってきたのはなぜかはとりで、胡粋はそれに動揺することもなく「なに?」と振り返る。




「お楽しみの邪魔されると困るんだけど?」



「雨麗が困ってるだろ。

あとな……お前の目的はこっちだったんだろうが、それ以上に雪深が潰れかけてる」



「……は?」



はとりの背後から顔をのぞかせた菓ちゃん。

顔は赤いものの、なぜか彼女はけろっとしていて、開け放たれた扉の奥に見える雪深はしゃがみこんで頭を抱えていた。



「え……どういう状況?」



「たとえ演技でも、あいつにとっては負担だったんだろ。

まあ、「胡粋ゆるさない」って言いつつも……はだけていく雨麗のことはしっかり目視してたけどな」



「はは、清々しいほど健全な男子高校生だね」



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