鵠ノ夜[中]
柊季と行った、バーで。わたしは彼──"オウル"にも、例の通り魔事件について聞いてあった。
御陵には多数の情報網がある。けれどそのどれも『モルテ』については歯が立たず、わたしが裏で独自の情報網を利用している。
お父様とは気が合わないけれど、わたしが相手だからと契約してくれる相手だって少なくは無い。
電話の先にいる彼と出会った時は、話をつけるまで相当時間がかかった。その分、協力してくれるようになってからの情報はとても役に立つのだけれど。
『ビンゴだったよ。やっぱりドラッグ摂取してた。
君たちの間ではもう『モルテ』と名前のつけられているあれだ』
「やっぱり、ね」
『通り魔事件の犯人は25歳の無職の男。
まあ実家暮らしで引きこもっているから、俗に言うニートだよ』
「ええ、それくらいは知ってるわ」
『気になった点といえば……そうだな。
ネットに、とある掲示板を立てておいた。その『モルテ』について匿名で自由に書き込める掲示板。──その中に、気になるスレッドがあってね』
そっちに画像送ったよと言われて、電話をスピーカーに切り替え、メッセージを確認する。
送られてきた数枚の画像はどうやらその掲示板のスレッドの中から、彼が選別したものらしい。
それに一通り目を通したわたしは、そこに書かれた複数の情報に目を見張った。
──どうりで、容易に、探せないわけだ。
『おそらく……
『モルテ』は、女子高校生が受け渡してる』
「どういうこと、」
『簡単なことだよ。
女子高生……特に身体を売って、小遣い稼ぎなんかしてる子。その子と一度はそういう関係になって、『モルテ』の話を持ちかける』
「……そこから、別の相手のところに運ばせるの、ね」
モルテは今や裏で高額売買されているもの。
莫大な金が入るのなら、女子高生ひとりにモルテを運ばせ、数万渡したって取引元に損はほぼ無い。