鵠ノ夜[中]
……ああ、だから、か。
自分が邪魔な存在だと言われているせいで聞き出せねえから、俺らに手伝え、ってことだな。
「それはいいけど……
俺ら、レイみたいに尋問上手い自信ないよ?」
「大丈夫、証拠も完全に抑えてあるから。
……できれば雪深かはとりにお願いしたいんだけど、」
「いいよ、俺やる」
名乗り出たのは雪深の方で、「口説き落とすの得意だから」と笑ってみせた。
……まあ、確かにそうなんだけどな。素直にそうだな、と言えない気分にさせられるのは、雪深の恋情のせいか。
「ならお願いね。
詳しいことは明日実際に話をする前に決める予定だから、ファイルに目だけ通しておいて」
そんな俺らの感情はさておき、手短に話を済ませた雨麗は「ああそうだ、」と残りのファイルを手に抱え、俺らに向き直った。
視線を向けられたのは芙夏で、首をかしげる動きに合わせて髪が揺れる。
「週末、空いてる?」
「え、ぼく?」
「ええ。
土日の予定が空いてるなら、すこし付き合って欲しいのよ」
「うん、だいじょうぶ、だよー?
あ、でもお稽古あるから、」
「ああ、それは大丈夫。
稽古の時間くらい、別の日に変えてもらうこともできるから」
なら大丈夫、と笑った芙夏。
それに「よろしくね」と返した雨麗は、ファイルを抱えているのとは反対の手で、芙夏の髪を撫でた。
「……ごめんね」