隣の不器用王子のご飯係はじめました
「ううん。どうせ私も今年は実家で手伝いお願いされてて、そんなに遊べなさそうだったから」
「そう、どっちにしろだったのね」
「実家?え、在花ちゃんもしかして一人暮らししてんの?」
杉野くんが驚いたように言ったので、私は苦笑いしてうなずいた。
「うん。私の家さ……」
◇
「へえ!農家だったんだ、ありりんの家!」
レナさんのお部屋にて。
夕食中に夏休みの話題になり、今日ちょうど教室で杉野くんに話したのと同じような話をレナさんと遠坂くんにしていた。
「そうなんです。それも見渡す限り畑か田んぼしかないような場所で。最寄り駅からはバスで40分、そのバスも1時間に一本ぐらいしかなくて本当に不便なんですよね」
しかもその最寄り駅から高校の最寄り駅まで二時間半。
近くに他に高校がないわけでもなかったけど、いわゆる進学校ではない。大学に進学できて私の学力レベルに合っている、という条件を付けるとこの住沢高校がこれでも一番近いのだ。